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Your search : [ author:胡万春 え·戴沢] Total 5 Search Results,Processed in 0.096 second(s)
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1. 歩高さん
会場には笑い声が渦卷いていた。「御免御免、ちよつととおしてくれ」楊小牛(ヤンシヤオニユウ)は人のなかをかきわけるようにしながら演壇に上つていつた。瘦せぎすの若者で、藍色木綿のハンチングをかぶつている。明るい照明に慣れない人のように、まぶしそうにまばたきをすると、会場の人びとの頭越しに誰かを探すような目付になつた。だが会場をうずめた労働者たちの興奮した顏は、どれもこれも同じように見えて、誰が誰やら見
Author: 胡万春 え·戴沢 Year 1959 Issue 11 PDF HTML
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2. 戦馬に跨がつて戦え
ブラシのような髪の毛と長い眉毛、だがどちらももう半分は白くなつている圧延労働者として二十何年の職歴をもつ程徳才(チヨントーツアイ)も、たしかに年を取つたといわねばならない。だがかれは年寄りといわれるのが嫌いで、いつもよく若者たちの前でわざわざ袖をまくりあげ、たくましい、だが小じわのみえる腕をむき出してはそれを振りまわしながらこう言つた。「どうだい、この腕は。筋金がとおつとるか、とおつとらんか、え?
Author: 胡万春 え·戴沢 Year 1961 Issue 4 PDF HTML
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3. おもちやの小犬とリンゴ
昨夜、何大媽(ホーターマー)はいろんな夢をみた。だがどんな夢をみたかはつきりとは思い出せない。ただ、一番しまいの夢だけは、目がさめた後にもありありと記憶にのこつていた。まんまるい顔をしたぬいぐるみの小犬の夢である。小犬は口に針金をくわえているが、その片端に小さな球がつつてある。犬がその球を追えば、球は逃げる。グルグル輪をえがいて小犬は球を追いかける。見ている方で目がまわりそうになつても小犬はやめな
Author: 茹志鵑 え·戴沢 Year 1960 Issue 3 PDF HTML
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4. 愛情の芽ばえ
1ここのところじめじめした長雨つづきで、まつたくクサクサさせられた。ところが、今日は見違えるような天氣と來ている。靑い空には綿雲が浮かんでいるし、黃ばんだエンジユの葉が風にサラサラなつている。それに工場の屋根の天窓までが、ダイヤモンドのようにキラキラ光つている。あー、いい日曜日だなあ……俺はすがすがしい空氣を胸いつぱい吸い込んで、ベンチに腰を下すと、手早くユニフオームを着込み、靴をはきかえた。支度
Author: 胡万春(フーワンチユン) Year 1958 Issue 7 PDF HTML
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5. 先輩
今日は日曜日、工場は休みで職場主任をしている老熟練工の陳(チエン)さんはどこへも出かけず、家の中でねそべっていた。窓の外にはしだれ柳の濃い緑の枝が、そよぎもせずにじっとたれさがっている。ちょうど暑いさかりの昼さがりなので、部屋の中はひっそりと静まり、疲れを知らぬ蟬たちのさかんな鳴き声さえも、何となく眠気をさそうようだ。しかし陳さんはなにやら考え事があって、すこしも眠気を感じなかった。そのとき階段に
Author: 胡万春(フーワンチユン) え·翁乃強(ウオンナイチヤ) Year 1964 Issue 9 PDF HTML